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【考察】 G2015 ヘルスケアプロバイダーの通報のタイミング

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昨日は、午前中の「傷病者対応コースfor bystanders」に続けて、午後はBLSヘルスケアプロバイダーコースを開催しました。

どちらも最新のガイドライン2015で開催したのですが、方や市民向けプロトコル、かたや医療者向けプロトコル。

続けてやってみると、同じガイドライン2015でも、変更の中身は随分と違うものだなと感じました。

市民向けCPRは、しいて言うなら、胸骨圧迫のテンポの上限の120回を示す以外は大きな変更はないように思います。ですから、旧2010の教育ビデオや教え方でもほぼそのまま通じます。

それに対してヘルスケアプロバイダー向け勧告はG2005、2010、2015と大きな変遷を見せています。

手順の一部だけをピックアップして並べますと、

CPR開始までの手順の推移*AHAヘルスケアプロバイダー向けアルゴリズム


こうして並べてみると、最新のG2015は、2つ前のG2005の手順に回帰したようにも見えます。脈と呼吸を別々に見るか、同時に見るかの違いだけで、「流れ」としては、2世代前に戻ったようにも思えます。

しかし、問題は、【通報】のボックスの中身にあると思います。

今回のガイドライン2015では、通報の仕方の中身が細かく検討されるようになり、アルゴリズム図からはなかなか計り知れない複雑さを示しています。

これまでのガイドラインでは、「通報」のボックスには概念としては大きくふたつ、

1.救急対応システムへの連絡
2.AED手配

が含まれていました。そしてこれは別個のアクションというよりは、ほぼひとかたまりのものとして捉えられていたように思います。

つまり、「通報」を依頼された人は、「119番に通報して、AEDを見つけて戻ってくる」ことが期待されていました。(細かいシュチュエーション別に見ればもっと多様性がありますが)

G2005と2010のアルゴリズムでも小児に関して言えば、

1.その場で叫び、助けを求める(周りに誰かいるかいないかに関わらず)
2.救急対応システムへの通報+AED手配

というように、評価や救命の手を停めてまでして通報をするか、手を停めずに叫ぶだけで応援を要請するかを分けている部分はありました。

(目撃のない心停止≒呼吸原性心停止であれば、叫んでも誰も来なければ通報よりCPR着手を優先する。2分間CPRしても反応が戻らず誰も来なければ、手を停めて通報+AED入手)


それが、G2015では、成人のBLSアルゴリズムも含めて、通報の中身を3つのフェーズに分ける概念が採用されているように思います。

1.その場で叫び、助けを求める
2.救急対応システムを発動させる
3.AEDを入手する

この視点にたって、G2015成人BLSのアルゴリズムを見ると、すこし解釈が変わってくるかもしれません。

AHAガイドライン2015成人BLSのアルゴリズム一部抜粋(AHAガイドライン2015ハイライトより)



2番目のボックスの中身をみると、傷病者に反応がなければ、

1.大声で周囲に助けを求める
2.携帯端末で救急対応システムに通報する(適切な場合)
3.AEDおよび救急治療資器材を持ってくる(もしくは誰かにAEDを取ってくるように依頼する)

という行動が示されています。

これを見ると、このボックスで必ず行うのは、

1.その場で叫ぶ
2.AEDを取るか手配する

の2点であり、救急対応システムへの通報は(適切な場合)とあり、絶対条件的には書かれていません。

そして、心停止確認後、CPR開始前に破線部分の注釈にあるように、CPRを開始する前には、

1.救急対応システムへの出動要請
2.AED手配

の2点が修了していることが求められています。

これらをどう解釈するか、、、、ですが、この例は成人のBLSですから、心原性心停止(すなわち心室細動)を前提とし、救命の要は早期除細動と考えます。

ですから、反応がない人がいた場合は、心停止を確認する以前の速いうちからAED手配を考えます。つまり、まずは叫んで近くに人がいればAEDを持ってくるように頼み、もし誰もいなければ、近くにAEDがあることを知っていれば自分で取りに行きます。

AED手配と救急対応システムの通報がこれまでは同列に扱われていたのに対して、ここからは、AED手配が優先されることが示されているように思います。

現実的には、AEDが近くにあることを知らなければ、119番通報することが、=AED手配ということにもなるかと思いますが、厳密には概念を分けていると考えると、理解しやすいように思います。

話が少し込み入ってきてしまいましたが、結論をいうと、ヘルススケアプロバイダーの通報のタイミングはフレキシブルで、明確には規定されていないということです。携帯電話や病院内PHS、トランシーバーのような携帯端末で時間を掛けずに通報できる場合は、早期に呼ぶべきだし、通報に時間が掛かりそうなら心停止を確認してCPR開始する前までには通報するように、ということです。ただし、AEDの手配は遅れることがないように配慮するように、ということになります。

これがガイドライン変更の概念ですが、これをどのように受講者に伝えていくのかは難しいところです。今回出てきたトピックとしては、スマートフォンのハンズフリー通話機能を活用して、手を止めずに通報を行う案も示されています。

教える上では煩雑さは敵ですから、おそらく一元的なシンプルな形に整理されそうな気がしますが、2月15日のヘルスケアプロバイダーコース教材(英語)がリリースされるのが楽しみです。





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